キウイ大好き!
確かにそうかもしれない。ATM機の足元で一万円札を見つけたり
1000円札を拾ったり、道路上では財布を拾ったりと、そんな経験は
まだ記憶に新しい。しかし、その度に派出所に出かけ面倒な手続き
に時間を費やし、うんざりすることも多かった。
そういえば海外旅行に行った時も良くお金を拾っていた。
例えばニュージーランドでは、空港の売店で足元に落ちていた
ドル紙幣を見付けてお店の人に届けたり、湖のほとりにあった
ベンチ上では、無造作に置かれていた財布を見付け、急いで
観光案内所のカウンターまで届けたこともあった。
またイギリスではデパートの化粧室の棚にポツンと置かれて
いた財布を見付けたこともある。この時はサービスカウンターが
見つからず近くのお店に届けたような気がする。
いずれも日本のような面倒な手続きはなく、感謝の言葉も
実にあっさりしたものだった。
ところが最近、こともあろうに今度は自分が財布を紛失して
しまった。確かに郵便局の窓口で財布を出しスマートレター代
を支払ったはずだ。その帰宅途中でスーパーに立ち寄り、買い物
を済ませてレジの前に立った時、財布が見当たらない。
ザックの底をいくらあさっても出てこない。吹き出る汗を必死
に拭いながらレジの女性に訳を話して清算を待ってもらうことに
した。
行先は決まっている。途中で落とすはずがないから郵便局である。
私は心臓の動悸を抑えながら殆ど小走りで郵便局に飛び込んだ。
5.6分かかっただろうか。局に着いたらまずカウンターへ行く。
マイナンバーカードが入っているから身分証明は確実だ。
でも、それが紛失していたら厄介なことになる。
しかし、何よりも先に局内でザックを下ろした窓際の
テーブルを確認することである。
真っ先に向けた視線の先に「あった!」。
何と黄色の丸々した見慣れた財布がポツンと其処にあった。
一瞬、我が目を疑った。信じられない。しかし間違いなく
私の財布だった。だが、これで安心するのはまだ早そうだ。
問題は中身である。私は1万円札と大事なマイナンバーカードを
しっかりと確認出来てようやく安堵した。
それにしてもこの財布は少なくても20分間、誰の目にも
止まらず、ここに鎮座していたことになる。
不思議な光景であった。この辺では人の出入りの多い郵便局
であるのに。だが私が訪れた時は局内は閑散としていた。
これも幸いだったかもしれない。もしかしたら、私のお金に
まつわる善行に対してのご褒美だったかも。足取り軽く
私は再びスーパーのレジ女性とにこやかに向き合った。
こんなラッキーな結末を迎えることが出来たのは、
このスーパーの店頭に山と積まれたキウイのお陰である。
私の足を止め、財布の紛失をいち早く気づかせてくれた
のだから。キウイが好きで良かった。
「有難う!キウイ!」
2024年8月
(photo by y.y:十日町市 星と森の詩美術館にて)