お身体を大切に… v5-49
3ヶ月に一回、送られてくる化粧品がある。その化粧品会社
から「あなたのステージが四つ星になりました!」という案内
が届いた。購入額に関係なく購入継続年数によって客の所属
ステージがアップするらしい。会社としては客をつなぎ留め
たい一心に違いないが、どんな特典があるか気になった。
そこで同封されていたパンフレットに目を通してみたが、
どうもすっきりと理解出来ない。
そこで「お客様センター」へ電話してみた。要件を話すと実に
丁重な言葉が返ってきた。「そうなんですよ、解りにくくて
すみません」と言う。解りにくいことが分かっているなら何故
改善しないのだろう。などと心中、思いながらようやく
サービスの全容を理解できた。そして電話を切る時になって
再び担当女性の親切極まりない言葉が受話器から流れてきた。
「お誕生日もうすぐですよね。今年もお誕生日祝いのカタログ
が届くと思います。是非ご応募下さいね。それにまだまだ暑い
日が続きます。どうかお身体にお気をつけてお過ごし下さい。
コロナも蔓延してますね。十分充分、お気をつけて。
また来年も次の年もどうかどうかお元気でいらして…くれぐれも
お健やかに…云々」。よくもまあ、こんなに労わりの言葉が出て
くるものだと、半ばあきれながら中年女性らしき電話の声に耳を
傾けた。その内、私は恐縮を通り越して早く電話を切りたくなっ
た。そしてほどなく自分の方から丁重に受話器を置いた。
そのあと、何となく憂鬱な気分になった。
電話の向こうの彼女の言葉は職業的サービス精神からか、ある
いは心底そう思ってくれたのかは分からない。どちらにしても
私はもう既に十分労わられてもいい年齢に達しているらしい。
確かに自力で出来ないことが多くなった。
しかし、そんな私でも若い人並みに出来ることもある。
例えば苦手だったヨガの「ワシのポーズ」が最近は何とか見ら
れる形になった。また先日、「安部元首相の国葬反対」の署名
運動にネットで参加出来た。
それにしてもあの電話の女性のように何回も「お身体を大切に‥」
などと言われても…本当は「身体だけ元気でもねぇ」と言って
みたいところである。しかし、ここは素直に
「高齢の身を案じてくれてありがとう」と思うことにしよう。
2022年8月
(photo by y.y:志賀高原にて)
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