きょうだい会 v5-39
私のきょうだいは弟が一人いるだけである。
7人もきょうだいがいるとは羨ましい話だ。しかもその内5人が健在
とは今時珍しいことではないだろうか。そんな夫の「姉弟会」が先日、
越後湯沢で開かれた。
集まったのは夫の3人の姉と1人の弟、その伴侶たちを入れて7人、
さらに送迎を手伝ってくれた姪と甥の総勢9人である。
助っ人の甥と姪を除いた7人の平均年齢は実に83才であった。
最高齢は89才の義姉である。2人の義姉たちが「小さな箱に入って
しまったら口がきけないよ、姉(89才)が元気な内に会いたいよ」と
常に言っていたのも主宰する夫の気持ちを動かしたに違いない。
コロナ禍の中、食事処が許可してくれたのは有難いが、集まる方も
かなり勇気がいったはずだ。だがみんな喜んで出かけてきた。
新潟県から、埼玉県から、そして東京から。
コロナのせいで3年振りの出会いであった。
当日、最高齢の義姉は娘の車から車椅子に乗せられ会場に現れた。
再び娘の力を借りて靴を脱ぎ、崩れるように畳の上に這いあがる
と何と正座して目前にいた私に深々と頭を下げた。
あれっ正座は大丈夫なんだと心中で驚く私の耳に、いつもと
変わらぬ義姉のしっかりした言葉が飛び込んできた。
彼女は足腰が極端に弱ってしまっただけだ。
84才になる義兄は昨年、認知症の疑いで車の免許の更新ができ
なかった。しかし、彼はいつも皆の輪の中心に座っていた。
彼の笑い声も言葉も殆ど耳には入らなかったが、彼は時々
穏やかな笑みを浮かべていた。そういえば3年前に会った時の
義兄も寡黙な人だった。ただ違っていたのは瞳の色、意思の
有る表情にはついに出会えなかった。
元気なのは義姉たちである。
83才の姉は湾曲した背中を気にしていたが、本人曰く
「母親に似たのね、きっと」などとさっぱりした様子だった。
86才の義姉は「私は今が一番幸せ!」と言って微笑んだ。
夫を6年前に亡くし、今は自分本位の生活を満喫しているそうだ。
住み慣れた家での長男家族との生活には何の不満もなさそうだ。
両足の膝には金具が入っているというが、毎日ゲートボールを
楽しんでいるらしい。私にはとても理解できない障害者である。
年の取り方、向き合い方は千差万別なようだ。夫のように自身の
体調不良も顧みず高齢者のために走り回る高齢者もいる。
高齢者の真っただ中にいる私はどうだろう。恐らく私も86才の
義姉と同じようにこう言うだろう。「私は今が一番幸せ!」と。
2021年11月
(photo by y.y:ホテル・ベルナティオ敷地内にて)
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