もうすぐ秋 v5-36
あと数日で9月である。
その頃になればコロナ禍も下火になるのでは、との微かな望みも
期待外れになりそうだ。ただ一国の首相だけがその日が近いと
信じているようだ。
最近の首相の会見をテレビで見た。
首相は悲惨な医療情勢が全く念頭にないかのように時々下を向き、
力のない声でこう言った。
「…明かりははっきりと見え始めています…」
そんな危機意識の欠如した首相の言葉を国民はどこまで信じる
ことが出来ようか。
もしこのような状況下で国のリーダーが例えばイギリスの
ジョンソン首相だったらどうだろう。恐らく彼はマイクを
握りしめ、しっかり前を向きこう叫ぶだろう。
「国民の皆さん!今は我慢して下さい!もう少しです。
明るい光は見えています!…」と。
またドイツのメルケル首相だったら拳を握りしめて
こう言うに違いない。
「…皆さん!私は耐えられません!文明国で適切な医療を受け
られず、自宅で一人寂しく息を引き取る現状なんて…皆さん、自粛
に協力して下さい!私どもは医療体制をすぐさま立て直します。
コロナ患者専門病院を早急に作ります。まずは自衛隊病院を
コロナ専門病院にします!…」
ついでにニュージーランドのアーダ−ン首相はどうだろう。
彼女はしっかり前を見つめ悲壮感を漂わせてこう言うだろう。
「国民の皆さん!ロックダウンします!どうか2週間だけ辛抱
して下さい!!」と。
終戦後76年、日本は平和すぎたのだろうか。
危機意識の薄い日本人が多く育ってしまったのかもしれない。
しかし、そんな中でも救世主が現れても良さそうなものだが。
名のある批評家たちがマスコミで立派なことを言い叫んでいるが、
コロナ禍の日常は2年近くになっても変わらない。
それどころかだんだん酷くなっている。
「誰が施政をやっても今は同じ」という共通認識の下に、
コロナ禍の今、政権を担う自民党の政治家たちは次のリーダー
探しに暗躍している。どうしてこんな国になってしまったのだろう。
憂鬱な日々がまだまだ続く。
清々しい秋空がもうすぐやってくると言うのに…。
2021年8月
(photo by y.y:八幡平にて)
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