ワクチン狂騒曲 v5-33
コロナワクチンの集団接種の予約日がやってきた。早々に家事
を済ませ、予約開始10分前にソファーに腰を下ろしスマホ画面を
凝視する。心臓がドキドキ、ソワソワするなんて久しぶりだ。
9時になった。思わず大声で「9時になったよ!」と別室にいる
夫に叫ぶ。即座に夫はPC、私はスマホ画面に目を凝らした。
注意深く丁寧に指を動かす。事前入力してあった個人情報が功を
奏して画面はスムーズだ。あとは会場、ワクチンの種類、
希望日時の選択などだ。そして最後のプッシュで予約完了画面
となった。「終わった!」夫とほぼ同時に歓声。
終わってみれば実に簡単、2,3分だった。
その後、2回目の予約をしていないことに気づき慌てた。
すぐさま出来たてのマイページを開き2回目の接種日の予約をする。
これも首尾よくいった。まるで希少価値のチケットを手に入れた
ような気分だ。実に久しぶりに味わう達成感であった。
しかし、何となく後味が悪いことになった。
Webや電話で予約を試みながら成果をあげられなかった友人、
知人たちが多くいたことを知ったせいだ。その後、家族総出で
高齢者のワクチン予約をサポートしたなどという涙ぐましい家族愛も
数多く伝わってきた。Web予約に成功した私たちはラッキーだった
に違いない。
しかし喜んでばかりはおれない。世の中のIT化はますます進んで
いくことだろう。先日、海外へ小包送付をした時もそうだった。
手続きがすっかり複雑になっていて慌てた。また駅のコインロッカー
でさえデジタル化され、単純にコインの挿入だけで使用できた昔の
ロッカーがすっかり姿を消した。
時代の流れは留まってくれない。
アクティブに生きようとする高齢者にとっては試練の日々が続きそうだ。
「まだ大丈夫、何とかなるよ」などといつまで言えるだろうか。
もっともいよいよとなったら、さっさと退散、優しい若者たちに
助けを求めれば済む話である。
2021年5月
(photo by y.y:玉川上水にて)
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