デジタル化       v5-31
   

 小包を出すために近くの郵便局へ行った。
窓口で宛名、差出人を添付した郵便物を差し出すとこれでは駄目
だと言う。受付の女性が2枚のチラシを差し出し、今年1月1日
から国際郵便の規則が変更になったと告げた。

帰宅してチラシを見ながら自宅のパソコンに向き合ってみた
ものの何やら難しそうだ。そこで夫に手伝ってもらいようやく
「国際郵便マイページサービス」への会員登録を済ませた。
それから送り状の作成である。これがなかなか大変な作業に
なった。



「説明文が分かりづらい」などと他人のせいにしながら、2時間
ほど費やしてようやく送り状が作成できた。まるで郵便局員の
作業を代行しているような気分だ。
それにしても、これからのことを考えると憂鬱になった。

翌日、パソコンで出力したラベルと小型包装物を持参して再び
窓口に立った。今度はスムーズに品物を受け付けてもらえた。
しかし、余りにも淡々と手続きを進める受付嬢の手元を見ている
内に一言いいたくなった。

「このラベルを印刷するのに半日もかかってしまいましたよ。
私には夫の手助けがあったので何とかなりましたが、パソコンが
苦手な人はどうするんですか?高齢者が増えてきて、中には海外
にいる孫に物を送る人もいますよね。第一パソコンやプリンター
がない人はどうするんです?」



私の剣幕につられて若い郵便局員は慌てて「局に来ていただければ
タブレットをお貸ししますよ。またどなたかにお願いするとか…」
「と言うことは入力などサポートしてくれるんですね?」
「いえ、それはご自分でやっていただくことになっています」
結局、自分で何とかしなさいと言うことらしい。

セキュリティ強化のためシステムが複雑化、デジタル化していくのは
何も郵便局だけではなさそうだ。所謂デジタル難民、特に増え続ける
高齢者にとっては大変な世の中になったものだ。
私も他人事ではなくなった。
とはいえ難しかったらさっさと他人の助けを求めればいい。
その点、私は大丈夫などと頭の中で助っ人を数えてみた。しかし、
安穏としてはいられない。きっと彼らは私に向かってこう言うだろう。
「まずは自助が大切ね」と。
これって、どこかで耳にしたような文言である。
             2021年3月


           (photo by y.y:井の頭公園にて)

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