ドクダミ      v5-21
 
 遠回りしてスーパーマーケットに行くことが多くなった。
そのせいか路傍に咲く花々との出会いも多い。そんな中、最近
特に注目している花が「ドクダミ」である。
あちらこちらで良く目にする平凡な花だが、実は世の中に大変
役立っている植物のようだ。

それなのに、あまり人気のない花である。じめじめとした
陰気な場所を好むのが良くないのか、またはあの「ドクダミ」
という物騒な名前がいけないかもしれない。いかにも毒を
持っていそうな植物に見えるが、実際は毒は持っていない。

それどころか健康にいい「ドクダミ茶」となり、内服薬や
外用薬などにも使用されているようだ。漢方ではもっぱら
解熱剤としても使われているそうだ。あの「爽健美茶」の
主成分の一つであることも調べてみて初めて知った。
それなのに「ドクダミ」とは。
名前の由来は「毒を矯(た)める…毒を正しく直す」から
きているそうだ。



そんなドクダミに敬意を持って改めて対面してみると、
私が花と呼んでいる白い部分は花ではなくて「総苞片」と
呼ぶそうだ。中央にこんもりと立ち上がっている花穂に
くっついている淡黄色状のものが花である。
花はじっくり見ないと分からないわけだ。

そんな白い「総苞片」を見ていくうちに二つの変わり種が
見つかった。「総苞片」が5枚あるものと、八重になって
いるものである。もっとも八重の「総苞片」は昔、
高幡不動尊の境内で見つけたことがある。



そんな路傍に咲く平凡な花々でも出会った時はすかさず
名前を呼んであげる。それが草花に接する礼儀だと心得て
いるが、最近はそうはいかなくなった。なかなか花の
名前が出てこない。申し訳ないからスマホで写真に撮り
家で確認する面倒な仕事が増えた。

忙しい日常ではなし、せめてそんな余裕だけは失わない
ようにしないと。そう言えばかって
「花の名前を知ったってねぇ…花は花でしょう!」なんて
言った職場の同僚がいた。彼女の名前はとっくに忘れた。
世の中には忘れてもいい名前もあるものだ。

           2020年6月1日
         
(photo by k.y:玉川上水付近にて)

 top  y.y.corner f. salon  essay old