カタカナ語 v5-18
新型コロナウイルスが蔓延している。
さらに最近は聞き慣れない多くのカタカナ語が日常生活に溢れて
きた。毎日の生活が落ち着かないのは、見えないウイルスのせい
にちがいないが、こういった言葉も多少影響しているように
思えてならない。
先日、記者会見時に小池都知事が放った言葉に「ロックダウン」
そして「オーバーシュート」がある。状況から察するといずれも
緊迫感を示す言葉であろうとは想像できたが、初めて耳にした時
はそれほど衝撃を受けなかった。
ところが話が進んでいくうちに驚いた。
ロックダウンとは「都市封鎖」、「オーバーシュート」とは
「爆発的感染」を意味しているのだ。「都市封鎖」の言葉には
咄嗟に中国の武漢が目に浮かび、「爆発的感染」には
ニューヨークの混乱ぶりが思い起こされた。
(フデリンドウ)
その後、次々とカタカナ語の襲来である。「クラスター」を生じ
させないために政府は「テレワーク」を推奨するようになった。
これには「ビデオカンファレンス」が必要となり、さらに息抜き
に「オンライン飲み会」などと言う言葉も飛び交うようになった。
先日、我々もオンライン上での「リモートパーティ」の仲間入り
をさせてもらった。これには「ウェブカメラ」なる物が必要で
あることも初めて知った。
他人との距離を取ること、これは「ソーシャル・ディスタンス」
と言い、また「ピークアウト」という物騒な言葉も耳にするよう
になった。状況が一向に好転しないせいか、次々と発せられる
カタカナ語には気を抜けないが、最近、日本語でも耳慣れない
言葉を耳にした。
(ニリンソウ)
それが「発出」である。先日、首相が「緊急事態宣言」を
「発出」すると言った。広辞苑で調べてみると「あらわれること」
「あらわすこと」「出発に同じ」とある。
「緊急事態」と言いながら随分と穏やかな言葉使いである。
「発令」と言わないのは何故だろう。
世の中の状況が深刻度を深めるにつれ、その意味合いもさらに
重みを増していくようだ。例えば「トリアージ」。
自然災害時に良く使われる言葉だが、現在の状況から考えると
さらに無常さ、非情さが際立ってくる。
日本語で置き換えてしまうと何とも恐ろしい。これだけは
カタカナ語のままで耳にする方が救われる気がする。
2020年4月
(photo by k.y:玉川上水緑道にて)
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