次に買うもの V5-06
身の回りを見渡すと見向きもされなくなった機器がいくつか目
に入る。例えばウオークマン、それから息子から譲ってもらった
BookLive(電子書籍)など。初めて手にした時は物珍しく結構
愛用したものなのに。
ガラケーの携帯電話からスマホに移行した時は、既に世の中は
すっかりスマホが主流になっていた。もたもたしながら世の中の
流れに縋りついているが、それもこの頃はだんだん難しくなった。
そんな中、未だに流行を追いかけている友人がいる。
彼女はウオークマンや電子書籍は私よりずっと早く手にしていた。
それにパソコンは勿論のことタブレットなども持っている。
何よりも驚いたのはスマホが世の中に出始めると、いち早く手に
したことである。
こうして彼女は近代的な機器に囲まれてさぞ快適な生活を送って
いるかと思うと、どうもそうとは言えないようだ。パソコンは
何回も教室に通うけれど思うように動かせないと嘆く。
スマホは、彼女より2年ほど遅れて手にした私が、時々彼女の
先生役になる。その彼女、先日、新しくパソコンを買い替えた。
その際、家電量販店の中でいろいろ新しい機器を目にしたらしい。
そこで見つけたのが自動翻訳機であった。
「次に買うものはこれだわ!」と彼女は目を輝かせて私に言った。
東京オリンピックも間近になった。街中には外国人が溢れている。
そんな彼らに道を聞かれる機会もあるだろう。
しかし、この機能を使えば外国語を話せなくても堂々と道案内
が出来ると言うのである。
全くりっぱな考えだと私は感心した。
もっと感心したのはそれを言ったのが81才の女性だからである。
だいたいそのようなシツエーションを想像する高齢女性がどれ
ほどいるだろうか。
水を注すようだがそんな現実はまずありえないと私は彼女に言った。
翻訳機を無駄にしないためには、それこそ自ら外国人に近づき
話しかけないといけないと付け加えた。高齢者に道など尋ねる
外国人はまずいないと思った方がいい。
残念ながらこれは私の経験から出た言葉である。
2019年9月
(photo by y.y:小金井公園にて)
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