ショッピング v5-05(イタリア編最終@2)
忙しいツアーだったが、ショッピングセンターに立ち寄れた
のは良かった。土産品の物色にはショッピングセンターが一番
いい。だが私にはイタリアの名産品に対する知識が不足していた。
そこでもっぱらガイドの推薦に頼ることになったが、案の定、
チョコレートやオリーブオイルなどの売り場には旅の仲間たちが
たむろしていた。中でも目を惹いたのはそんな彼女たちの多くが
手にしていたクノール社のリゾットの小袋であった。
クノールの商標は日本でもおなじみである。私は彼らの勢いに
押されて土産用にその小袋を大量に買い物籠に入れた。その内、
この製品が並んでいた棚はあっという間にカラになった。
どこかで見たような光景だ。爆買いはところ変われば日本人
だってするようだ。
食料品売り場の片隅に果物の量り売り場があった。
カラフルな果物の中にサクランボが山になっていた。形状は
日本で見るアメリカンチェリーと変わらない。価格は恐らく
日本の半値ぐらいだろうか、大変安い。そこで迷いながらその前
を行ったり来たりした。そしてついにその店の前に立ち止まった。
すると私の腕をつつく人がいる。振り返ると年配のイタリア人
女性であった。何やら私に告げようとするのだが私にはさっぱり
分からない。彼女は諦めて私をすぐ近くにあった小さなマシーン
の前に連れていった。そこで出ている紙切れを取れと言う仕草を
する。そこでその紙をひっぱると小さな数字が出てきた。
その数字を見て彼女はニッコリ微笑んで自分の紙切れを見せた。
彼女の紙には3と書いてあった。私より1番早い数字だ。
この番号札は注文受付順を現わすもののようだった。
親切な女性の買い物はなかなか終わらなかった。ようやく終わる
かと思ったらまた思い出したように新しく何やら注文する。
私には見慣れない果物や野菜で彼女の買い物カートは
いっぱいになった。
ようやく私の番になった。私はチェリーを指さし、手のひらを
二つ繋げて少し大きめのお椀を作った。それを見て売り場の
若いお兄さんは紙袋を広げながら適当にチェリーを入れ始めた。
時々私の顔を見ながら。ほどなく私は「ストップ!」と言った。
まさに適量であった。
イタリアでの初めての量り売り場での挑戦は「ジェスチャー」と
「ストップ!」だけで上手くいった。値段は350円ぐらいか。
このチェリーは実に美味でその後、数日間、我々の旅を潤して
くれた。
帰宅してから土産品の整理をしていて困ったことに気が付いた。
大量に仕入れたクノール社のリゾットの食べ方が分からない。
製品の袋の隅々を目を皿のようにして探しても英語の説明文が
見当たらない。こんなことは今まで一度もなかっただけに慌てた。
さてどうしたものだろう。その時、思い出したのが友人の娘
さんである。イタリア在住の経験がある娘さんは最適の助っ人で
あった。こうして日本語の「食べ方」のメモが付いた土産品が
完成した。思わぬ手のかかったショッピングになったものである。
2019年9月
( photo by y.y:北イタリアにて)
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