切手はどこ?(イタリア編No.3) v5-03

旅に出て真っ先に買うのは絵葉書と決まっている。
スマホ全盛の時代でも、私にとっては絵葉書を出すのが旅の
始まりを告げる儀式のようなものだ。
今回も旅の初日、雨に濡れるシルミオーネ湖畔の土産品店で
絵葉書を10枚買った。ついでに切手も所望したが売っていな
かった。

その晩、時差ぼけで眠れないのをいいことに絵葉書をせっせと
書いた。翌日、切手を購入出来たらすぐ投函するつもりだった。
しかし、切手を探し求めたが何処にも売っていなかった。
あてにしていた店が丁度土日でクローズしていたのが大きな誤算
であったとガイドは言った。

 

その後、旅の行程が半分過ぎても切手購入は出来なかった。
しかし、ガイドは執拗に探しまくり、山里の小さな村で
ユーロ―圏向けの切手を手に入れた。おかげで私はUK向けの
絵葉書に切手を貼ることが出来たが今度はポストが見当たら
ない。これもガイドが山裾の駐車場で見つけてくれた。
これで何とか1枚の絵葉書はイタリアを飛び立った。

しかし、日本向けの切手購入は絶望的だった。恐らく旅行の
最終日、ミラノの国際空港で手に入れることになるだろう。
ガイドブックには確かに切手売り場が載っていた。でもそんな
時間があるだろうか。私をはじめ数人の仲間たちは、すっかり
諦めモードだった。皆、日本まで持ち帰り成田空港から出すと
言っていた。私もそのつもりだった。

しかし、ガイドは執拗にイタリアで絵はがきを投函することに
こだわった。「もう少し待って下さい。空港内に売り場があり
ますから皆で買いに行きましょう」と言う。どうもその時間を
作ってくれるらしい。しかし、この考えも功を奏しなかった。
空港で合流したイタリア人のサポート女性がガイドに何やら
説明している。どうも切手売り場は空港内にはない様子だ。
切手を買うにはいったん空港から外に出ないといけないなどと
言っている。これで万事休すとなった。

 

しかし、ガイドは諦めなかった。そして我々に最後の提案を
した。「切手代と皆さんが書いた絵葉書を彼女(イタリア人)
に渡して投函してもらうのはどうでしょう?」。
勿論、みな賛成した。こうして日本人が書いた絵葉書は
イタリア人の女性に託されることになった。

あれから10日ほど経ったが肝心の絵葉書は届いた様子がない。
そんな折、イギリスのバーバラから絵はがきが届いたとの
メールがきた。計算すると2週間はかかっている。
ともあれ、まずは届いてひと安心である。
気がかりなのは日本向けの絵葉書である。心配していると何と
帰国後、3週間過ぎてから「絵葉書着いたよ」との連絡が入る
ようになった。未だにミラノの空港の片隅で埃をかぶっている
のでは・・・などと思っていたがようやくイタリアを脱出出来
たようだ。ヤレヤレである。
             2019年7月
        
( photo by y.y:北イタリアにて)


top  y.y.corner f. salon  essay old