“うどん”こわい v5-53
今年、12月に入ってすぐに友人のTさんから「讃岐うどん」が送
られてきた。冷凍した「讃岐うどん」「たれ」そして「具」など
がセットされた手間のかからない便利な一品である。
ところがそれから2週間ほどして再びTさんから何か送られてきた。
品名をみると「さぬき饂飩」となっている。この「饂飩」という
活字が読めなくて辞書の助けを借りてようやく「うどん」と読めた。
今回は半生となっている。それにしても、また「うどん」である。
Tさんとは学生時代からの友人である。
四国の高松に住む彼女からは盆暮れ関係なく四国の名産品が良く
送られてくる。「物くれる友は大切にした方がいい」とは確か
有名な作家が言っていたが、大事にしている内に彼女との交流は
半世紀を超えてしまった。
しかし、こう度重なる贈答品には、さすがに受け取る方も気が
引けてくる。盛んに恐縮する私に彼女はいつも「気にしないでね。
物を送れるのは元気でいる証拠なんだから」と、いささかも気に
する様子がない。
こうして長年、彼女からの贈答品にまみれている内にすっかり
慣れてしまった。春になると「そろそろ“鰆の味噌漬け”が届く頃
だね」などと家人と話している。
なかなか届かないと「彼女、元気でいるかしら?」などと心配に
なる。彼女が言う通り、物が送られてくるのは彼女が元気で居る
証しになっているようだ。それにしてもお金のかかる便りである。
とはいえ今まで同じような品物を一か月に2回も送ってきたことは
なかった。「贈り物は元気な証し」などと安心して四国の名物を
堪能していてよいのだろうか。さすがに今回は少し心配になった。
あの有名な古典落語「まんじゅうこわい」という話を思い出す
のはこんな時である。落語ではまんじゅうが大好きなのに
“まんじゅうが嫌いだ、見るだけで身の毛がよだつほど恐い…”
などと嘘を言い、悪戯連中からまんまと大量のまんじゅうを
せしめる話になっている。
別に私はうどんが好きとか嫌いだとか言った覚えはないが、
これからの四国からの贈答品を想像すると少し怖くなってきた。
私の場合はあの落語とは正反対で、正真正銘
「うどんがこわい!」のである。
2022年12月
(photo by y.y:河口湖にて)
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